財産がなかったら相続税の申告は不要?

お客様👨‍🦰:ノダチさん、こんにちは。実は親族が亡くなりまして……。ただ、遺された財産はほとんどない状態なんです。こういう場合、税務署に相続税の申告をしに行く必要はまったくない、と考えて大丈夫でしょうか?

ノダチ👨‍💼:こんにちは!大切な方を亡くされて大変な中、これからの手続きについて調べていらっしゃるのですね。本当にお疲れ様です。ご質問の「財産がなかったら相続税の申告は不要か」についてですが、結論から言いますと、正味の遺産額が一定の基準以下であれば、原則として相続税はかかりませんし、相続税の申告も不要なことが多いです。

お客様👨‍🦰:あ、やっぱり不要なんですね!少し安心しました。

ノダチ👨‍💼:そうですよね。まずはホッとしていただいて大丈夫です。ただし、ここで注意が必要なのが、法律上で言われる「財産がない」「基礎控除以下である」という判断を、自己判断だけで進めてしまうのは少し危険な場合があるという点なんです。

お客様👨‍🦰:自己判断は危険……ですか?

ノダチ👨‍💼:はい。相続税の計算では、目に見える現金や預金だけでなく、実家の土地・建物といった「不動産」や、その他の「みなし相続財産」などもすべて合算して計算しなければなりません。さらに「税金自体は0円になるけれど、申告の書類だけは税務署に出さなければいけない」という特殊な特例のルールもあるんですよ。

相続税は基礎控除を超えるかどうかで判断する

お客様👨‍🦰:単純に「通帳の残高が少ないからセーフ!」というわけにはいかないんですね。そもそも、相続税がかかるかどうかの「基準」ってどのように決まるんですか?

ノダチ👨‍💼:相続税がかかるかどうかは、国税庁の規定に基づき、亡くなった方の「正味の遺産額」が「基礎控除額」という非課税の枠を超えているかどうかで判断します。

お客様👨‍🦰:正味の遺産額ですか。

ノダチ👨‍💼:はい。正味の遺産額というのは、土地や建物、預貯金などの「プラスの財産」の合計から、亡くなった方の借入金や未払金といった「債務(マイナスの財産)」、そして「葬式費用」などを差し引いた、実際の正味の残高のことです。この正味の遺産額が法律で決められた基礎控除額の枠内に収まっていれば相続税は1円もかかりません。

基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」

お客様👨‍🦰:その「基礎控除額」というのは、具体的にいくらくらいなんですか?

ノダチ👨‍💼:基礎控除額は、以下の計算式で一律に計算することができます。ぜひ覚えておいてくださいね。

基礎控除額の計算:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

お客様👨‍🦰:法定相続人の数、つまり財産を引き継ぐ権利がある家族の人数によって、非課税の枠が変わるんですね。

ノダチ👨‍💼:その通りです!いくつか分かりやすい具体例を見てみましょう。

具体例1:預金100万円・不動産なし(相続人が配偶者と子ども2人の計3名)

  • 基礎控除額の計算:3,000万円+(600万円×3) = 4,800万円
  • 状況:遺された財産は「預金100万円のみ」で、他に対象となる不動産や過去の贈与などが一切ない状態です。
  • 判断:正味の遺産額(100万円)は、基礎控除額(4,800万円)を大幅に下回っていますよね。そのため、この場合は相続税の申告も納税も、原則として完全に「不要」になります。

お客様👨‍🦰:4,800万円の枠に対して100万円ですから、これは完全に不要ですね。

ノダチ👨‍💼:そうですね。このように、明らかに財産が基礎控除を大きく下回っている場合は相続税の申告手続きについて心配する必要はありません。

財産が少なくても見落としやすい相続財産

お客様👨‍🦰:でも、ノダチさんが先ほど「自己判断は危険」とおっしゃっていたのが気になります。財産が少ないと思っていても実は基礎控除を超えてしまうケースがあるということですか?

ノダチ👨‍💼:「うちは財産がない」と仰る方の中には、税法上の「相続財産」に含まれるものを見落としてしまっているケースがよくあります。例えば、以下のようなものもすべて相続税の対象としてカウントしなければなりません。

  • 土地・建物・マンション(実家や古い田畑、山林など)
  • 車、貴金属、骨董品、美術品
  • 生命保険金(死亡保険金)・死亡退職金(※一定の非課税枠はあります)
  • 名義預金(口座の名義は子どもや孫になっているけれど、実際の原資は亡くなった方が貯めていた預金)
  • 過去に受けた贈与(亡くなる前の一時期に受け取った贈与などは、相続財産に足し戻して計算するルールがあります)

お客様👨‍🦰:ええっ!子どもの名義で親がコツコツ貯めてくれていた口座や亡くなる直前にもらったお小遣いのようなお金も相続財産に含めて計算しなきゃいけない場合があるんですか?

ノダチ👨‍💼:そうなんです。税務署の調査でも、こうした「名義預金」や「過去の贈与」は見落としやすいポイントとして細かくチェックされます。また、実家の不動産も「古い家だから価値はないだろう」と思っていても、土地の評価額をきちんと国税庁の基準(路線価など)で計算し直すと思いのほか高い金額になって基礎控除をオーバーしてしまう……ということも珍しくありません。

相続税が0円でも申告が必要になるケース

お客様👨‍🦰:なるほど……。もし、色々と計算した結果、「税額を減らせる特例」というのを使って最終的に相続税が0円になったとしたらその場合も申告は不要ですか?

ノダチ👨‍💼:ここが今回のブログで勘違いしやすい超重要ポイントです!結論からお伝えしますと、「国税庁が定めた特例を使った結果として税額が0円になる」という場合は、原則として相続税の申告書を税務署に提出しなければなりません。

お客様👨‍🦰:ええっ!税金が0円なのに申告書は出さないといけないんですか?

ノダチ👨‍💼:そうなんです。これを「申告要件」と言います。代表的なものとして、以下の2つの特例が有名です。

  1. 配偶者の税額軽減(配偶者控除):亡くなった方の配偶者(妻や夫)が財産をもらう場合、1億6,000万円(または法定相続分)まで相続税がかからなくなる制度。
  2. 小規模宅地等の特例:亡くなった方が住んでいた実家の土地などを、同居していたご家族などが引き継ぐ場合に、土地の評価額を最大80%も減額してくれる制度。

具体例2:配偶者の税額軽減を使えば税額0円になるケース

  • 状況:正味の遺産額が6,000万円で、基礎控除額(4,800万円)を超えてしまっている。しかし、配偶者がすべての財産を相続するため「配偶者の税額軽減」を使えば、最終的な相続税は「0円」になる。
  • 判断:税金は0円ですが、「特例を使います」ということを税務署に申告期限内に届け出なければ、この特例は適用されません。もし申告を忘れて放置してしまうと、特例が使えなくなり、後から高額な相続税とペナルティ(加算税など)を支払う羽目になってしまいます。

お客様👨‍🦰:「特例を使わなくても、最初から基礎控除以下だから0円」なのか「特例を適用したから結果的に0円」なのかによって、申告が必要かどうかが完全に分かれるんですね。これは知っておかないと本当に大変なことになりますね……。

ノダチ👨‍💼:そうなんです。なお、相続税の申告が必要な場合の期限は国税庁のルールで「相続の開始があったことを知った日の翌日(通常は亡くなった日の翌日)から10か月以内」と決まっています。この10か月という期間は、書類の準備などをしていると本当にあっという間に過ぎてしまいますので少しでも不安がある場合は、早めに税理士の先生や税務署へ確認をしてくださいね。

不動産があるなら相続登記が必要

お客様👨‍🦰:相続税の申告が必要か不要かは、基礎控除や特例の有無でなんとなく分かってきました。では、ここからは「税金が完全に不要(基礎控除以下)だった場合」のお話を聞きたいです。税金の申告がいらないならもう本当に何もしなくて大丈夫ですか?

ノダチ👨‍💼:ここからが後半の重要なポイントです!たとえ相続税の申告が完全に不要なケースであっても、引き継いだ財産の中に「不動産(実家や土地・マンションなど)」が含まれている場合は、必ず「相続登記」という名義変更の手続きを行わなければなりません。

お客様👨‍🦰:相続登記……名前は聞いたことがあります。

ノダチ👨‍💼:相続登記とは、亡くなった方の名義になっている不動産を新しく引き継ぐ相続人の名義へ書き換える法務局での手続きのことです。2024年4月から、この相続登記が法律で「義務化」されました。

お客様👨‍🦰:あ、義務化されたというニュース私も見ました!

ノダチ👨‍💼:そうなんです。原則として「自分が相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内」に登記をしないと、正当な理由がない限りペナルティ(過料)が科される可能性もあります。

具体例3:預金は少ないが、実家の土地建物があるケース

  • 状況:預金は数万円程度しかないけれど、明石市大久保にある実家(評価額2,000万円)が残されている。相続人は子ども2人で、基礎控除(4,200万円)以下なので相続税の申告は不要。
  • 必要なこと:相続税の申告は不要ですが、実家の名義をそのまま放置することはできません。ご兄弟で「どちらが実家を引き継ぐか」、あるいは「売却して分けるか」を話し合って決め(遺産分割協議)必ず法務局で相続登記を行う必要があります。

ノダチ👨‍💼:「うちには大した財産はないから」と言って、名義が明治時代や昭和の時代の古いご先祖様のまま放置されている土地や、私道(プライベートな道路)の持分だけがぽつんと残っているケースは私たち不動産の実務でも本当によく見かけます。後々になって売却しようとしたときに大変な苦労をすることになりますので、登記の手続きについてはぜひお早めに法務局や司法書士の先生へご相談されることを強くおすすめします。

亡くなった方の所得によっては準確定申告が必要

お客様👨‍🦰:税金の申告は不要でも、不動産の名義変更(相続登記)は絶対にやらなきゃいけないんですね。他にも税金関連で何か見落としやすい手続きはありますか?

ノダチ👨‍💼:はい、もう一つ別ジャンルの税金手続きとして、「準確定申告」が必要になる場合があります。これは「相続税」ではなく、亡くなった方の「所得税(確定申告)」の手続きです。

お客様👨‍🦰:準確定申告……初めて聞きました。

ノダチ👨‍💼:通常、生きている人は1年間の臨時の収入や事業の利益を翌年の2月〜3月に確定申告しますよね。しかし、年の途中で亡くなった方の場合は、亡くなった日までに発生したその年の所得(収入)を、遺された相続人が代わりに計算して、4か月以内に申告・納税しなければいけないというルールがあるんです。

お客様👨‍🦰:えっ、期限は「4か月以内」ですか!?相続税の10か月よりかなり短いですね。具体的にどんな人が対象になるんですか?

ノダチ👨‍💼:例えば、亡くなった方が以下のような状況だった場合は準確定申告が必要になる可能性が高いです。

  • 個人事業主として商売をしていた
  • アパートや駐車場などを経営し、不動産収入(家賃収入)があった
  • 公的年金による収入が年間400万円を超えていた
  • 給与所得以外に、株や投資信託の売却益など一定の所得があった
  • ※逆に、医療費がたくさんかかっていたので「医療費控除」の還付を受けたい、という理由で自主的に申告を行うケースもあります。

お客様👨‍🦰:なるほど、亡くなった方が生前にどんな仕事をしていたかどんな収入を得ていたかによって、必要かどうかが変わるわけですね。これは相続税の有無とは完全に別物としてチェックしないといけませんね。

ノダチ👨‍💼:こちらも個別具体的な必要性や計算については、税理士の先生や管轄の税務署へしっかり確認することをおすすめします。

借金が多い場合は相続放棄も検討する

お客様👨‍🦰:色々とお話を聞いていると、もし「プラスの財産」がほとんどなくて、逆に「借金や未払いの病院代などのマイナスの財産」の方が明らかに多い場合はどうすればいいんでしょうか?相続税の心配どころではない気がします……。

ノダチ👨‍💼:まさにその通りですね。もし調査を進めた結果、明らかに借金や債務といったマイナスの財産の方が多いことが分かった場合は、相続税の申告を心配するよりも前に、「相続放棄」を真剣に検討する必要があります。

お客様👨‍🦰:相続放棄をすれば、借金を代わりに返さなくてよくなるんですよね?

ノダチ👨‍💼:はい。相続放棄をすると、法律上「最初から相続人ではなかった」ものとみなされますので、借金などのマイナスの財産を引き継がなくて済みます。ただし、これには非常に厳格なルールがあります。

具体例4:借金の方が多いケース

  • 注意点①:期限は3か月以内「自己のために相続の開始があったことを知った時(通常は亡くなったことを知った時)」から、原則として3か月以内に手続きを行わなければなりません。
  • 注意点②:家庭裁判所での正式な手続きが必要親族間で「私は何もいらないから、お兄ちゃんが全部継いでよ」と言葉で約束したり、遺産分割協議書に「何も相続しない」と書いたりするだけでは、法律上の相続放棄にはなりません。債権者(お金を貸している人)から請求が来たら、拒絶できないんです。必ず家庭裁判所に正式な書類を提出して認めてもらう必要があります。

お客様👨‍🦰:3か月!準確定申告の4か月よりもさらに短いですね。のんびりしていると、あっという間に借金をすべて背負い込むことになってしまうんだ……。

ノダチ👨‍💼:そうなんです。また、相続放棄をしてしまうと借金だけでなく「実家」などのプラスの財産もすべて一切引き継ぐことができなくなります。非常に重大な判断を伴いますので、こちらも早急に弁護士の先生や司法書士の先生といった法律の専門家へ相談されることを強くお勧めします。

不動産は「財産がない」と思っていても価値があることがある

お客様👨‍🦰:色々なお話、本当に勉強になります。相続税がかからなくても、やらなきゃいけない手続きが山ほどあることがよく分かりました。

ノダチ👨‍💼:そう言っていただけて嬉しいです。最後に私たち不動産会社としての立場から、特に声を大にしてお伝えしたいアドバイスがあります。それは、ご家族が「うちの実家なんて田舎だし、古いし、財産価値なんてゼロだよ」と思っていても、実際にはしっかりとした価値がついたり逆に放置することで大きな負担になったりするという点です。

お客様👨‍🦰:価値がないと思っていても、実際は違うことがあるんですか?

ノダチ👨‍💼:はい!不動産の評価には、以下のような特有の難しさや見落としがちなポイントがあるんです。

  • 預金のように、通帳を見ても金額が一目で分からない
  • 毎年送られてくる「固定資産税の納税通知書」に書かれている評価額と、「実際に市場で売れる価格(実勢価格)」は全く異なるケースが多い(※古くても、土地として高く売れるエリアもあります!)
  • 「誰も住まない空き家」だからといって放置していると、固定資産税が毎年かかり続けるだけでなく、草木の繁茂や建物の倒壊などでご近所に迷惑をかけ、所有者としての管理責任(損害賠償リスクなど)が発生する
  • 私道(道路)の持分や、山林、農地など、一見気づきにくい名義の不動産がポツンと遺されていることがある

お客様👨‍🦰:なるほど。自分たちだけで「価値がないから放置していいや」と決めつけるのが、一番のリスクなんですね。

ノダチ👨‍💼:その通りです!だからこそ、まずは相続税がかかるかどうかの判断材料としてもそして今後の名義変更や売却の方針を決めるためにも、まずは「その不動産が実際にいくらくらいの価値を持っているのか」をプロの目で査定してみることがすべての相続手続きの第一歩として非常に大切になるんですよ。

まとめ|相続税が不要でも手続き不要とは限らない

今回の内容を、分かりやすく1本のタイムラインのように整理してまとめましょう!

【相続発生!】
  ↓
◆【3か月以内】借金が多ければ「相続放棄」を検討(家庭裁判所へ)
  ↓
◆【4か月以内】亡くなった方に一定の収入があれば「準確定申告」
  ↓
◆【10か月以内】基礎控除を超える場合、または特例(配偶者控除・小規模宅地等)を使う場合は「相続税の申告」
  ↓
◆【3年以内(義務化)】不動産を引き継ぐなら、法務局で「相続登記(名義変更)」

「うちは財産がないから何もしなくていい」と思わずに、まずはどの手続きが自分に必要なのかを1つずつ整理していくことが、将来のトラブルや余計な出費を防ぐための最大の秘訣です。

それぞれの専門家の窓口をもう一度整理しておきますね。

  • 税務判断(相続税・準確定申告など) = 税理士・税務署
  • 登記手続き(名義変更) = 司法書士・法務局
  • 法律問題・相続放棄の相談 = 弁護士・司法書士
  • 不動産の価値を知る・査定・売却の相談 = 不動産会社

それぞれのプロを上手に頼りながら一歩ずつ進めていきましょう!

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