遺言があると、本当に自分は相続できないの?

お客様👨‍🦰:ノダチさん、少し相談させてください……。先日、亡くなった父の遺言書が見つかったんです。中身を見たら「実家も預貯金もすべて兄に相続させる」と書かれていて。私は一切、何ももらえないということなんでしょうか?

ノダチ👨‍💼:それは悲しいお気持ちになりましたよね。お父様の遺言書があるとのこと、まずは心中お察しいたします。結論からお伝えしますと、遺言書がある場合、原則としてはその遺言の内容が最優先されます。これは法律上の大前提なんです。

お客様👨‍🦰:やっぱり、そうなんですね……。遺言にそう書かれている以上、私は一円も、実家の土地の一部すらもあきらめるしかないんでしょうか?

ノダチ👨‍💼:いいえ、実はそうとも言い切れないんですよ!法律は「亡くなった人の意思(遺言)」を尊重する一方で、残された法定相続人の生活を守るバランスも重視しています。そのため、遺言によって特定の相続人がまったく財産を受け取れないような極端なケースでも、最低限の取り分を請求できる権利が認められる可能性があるんです。それが「遺留分」です

お客様👨‍🦰:遺留分……ですか。聞いたことはありますが、私のような立場でも請求できるものなのでしょうか?

ノダチ👨‍💼:はい、状況やご関係性によりますが、可能性は十分にありますよ。ただし、遺留分には「誰にでも認められるわけではない」「自動的にもらえるわけではない」といった、いくつかの重要なルールがあるんです。順番にすっきり整理していきましょうね。

遺留分とは?最低限守られる相続人の権利

ノダチ👨‍💼:まず「遺留分とは何か」についてもう少し詳しくお話ししますね。遺留分とは、一定の法定相続人に法律上保障された、最低限度の相続分のことを言います。

お客様👨‍🦰:最低限度の保証、ですか。

ノダチ👨‍💼:そうです。例えば、今回のケースのように「全財産を長男に相続させる」という遺言があったり、極端な例だと「すべての財産を他人に遺贈(プレゼント)する」という遺言があったりした場合でも、遺留分を持つ相続人は自分の最低限の権利を侵害されたとして、財産を多くもらった人に対して「その分を支払ってほしい」と請求できる可能性があるんです

お客様👨‍🦰:なるほど。でも、もし遺留分を請求するとなったら、実家の一部(名義)を私のものとして取り戻すということになるんですか?

ノダチ👨‍💼:実は2019年に民法が改正されまして、遺留分の仕組みが大きく変わりました。法務省の案内にもある通り、現在は「遺産そのもの(実家の土地や建物の名義など)を当然に取り戻す」のではなく、「原則として、遺留分を侵害された額に相当する『金銭(お金)』を請求する」という制度(遺留分侵害額請求)になっています。

お客様👨‍🦰:あ、物そのものを分けるんじゃなくてお金で解決する仕組みになったんですね。

ノダチ👨‍💼:その通りです!昔の法律のように「実家の不動産名義を少しだけ取り戻して共有にする」となると、後々その不動産を売ることも貸すことも難しくなって、トラブルが長引いてしまっていたんです。そのため、現在は原則として「お金で精算する」という分かりやすい形になっています。

遺留分を請求できる人・できない人

お客様👨‍🦰:その「遺留分」は、法定相続人であれば誰でも請求できる権利なんですか?

ノダチ👨‍💼:ここが誤解されやすいのですが、実は法定相続人全員に遺留分があるわけではないんです。遺留分が認められる可能性があるのは、主に以下のような方々に限られています。

  • 配偶者(亡くなった方の妻や夫)
  • 子ども(子どもが先に亡くなっている場合は、孫などの「直系卑属」)
  • 父母・祖父母(子どもがいない場合の「直系尊属」)

お客様👨‍🦰:なるほど、亡くなった方に近い親族ですね。私はお父様の子どもですから対象に入りそうです。

ノダチ👨‍💼:はい、お客様の場合は「子ども」に該当しますので遺留分が認められる可能性が高いと言えますね。

兄弟姉妹には遺留分がない点に注意

お客様👨‍🦰:ちなみに、私の父には弟(私の伯父)がいるのですが伯父にも遺留分はあるんでしょうか?

ノダチ👨‍💼:注意しなければいけないポイントです。「兄弟姉妹(およびその子どもである甥・姪)」には、遺留分が一切認められていません。

お客様👨‍🦰:えっ!兄弟には遺留分がないんですか?

ノダチ👨‍💼:そうなんです。例えば、亡くなった方にお子さんがおらず、相続人が「配偶者」と「亡くなった方の兄弟」というケースを想像してみてください。もし遺言書に「すべての財産を妻に相続させる」と書かれていた場合、兄弟は法定相続人ではありますが遺留分がないため、奥様に対して「少しは分けてほしい」と法律上請求することはできない仕組みになっているんです。

お客様👨‍🦰:なるほど……。誰が相続人になるかによって、遺留分があるかどうかが完全に分かれるんですね。今回は私(子ども)の話なので権利がありそうで少しホッとしましたが、家族構成によって全く変わるというのは盲点でした。

遺留分はどれくらい?ケース別にわかりやすく解説

お客様👨‍🦰:私の場合、もし遺留分を請求できるとしたら、具体的にどれくらいの割合になるんでしょうか?

ノダチ👨‍💼:遺留分の基本的な「全体枠」は、法律で以下のように定められています。

  • 相続人が直系尊属(親や祖父母)のみの場合:相続財産全体の3分の1
  • それ以外の場合(配偶者や子どもがいる場合):相続財産全体の2分の1
  • ※何度も言いますが、兄弟姉妹には遺留分はありません。

ノダチ👨‍💼:その上で、各相続人の具体的な遺留分の割合は、国税庁のウェブサイトなどにも整理されている「法定相続分」の基準をベースにして、掛け算で計算していくことになります。いくつか具体的なケースで見てみましょう。

例1:相続人が「配偶者」と「子ども2人」の場合

全体の遺留分は「2分の1」となります。

  • 配偶者の法定相続分は2分の1なので、遺留分は1/2×1/2 = 全体の4分の1
  • 子ども全体の法定相続分は2分の1なので、子ども全体の遺留分も1/2×1/2=全体の4分の1
  • 今回は子どもが2人ですので、さらに2で割って、子ども1人あたりの遺留分は8分の1になります。

例2:相続人が「子ども2人」のみの場合(※今回のケース)

お客様のお母様がすでに他界されていて、相続人がご兄弟2人だけの場合ですね。

全体の遺留分は「2分の1」です。

  • 子ども2人で法定相続分を平等に分ける(各2分の1)ため、子ども1人あたりの遺留分は全体の4分の1(1/2×1/2 = 1/4)になります。

お客様👨‍🦰:ということは、もし父の財産(実家+預貯金)の合計が4,000万円相当だったとしたら、その4分の1である1,000万円相当分が、私の「遺留分」の目安になる可能性がある、ということですか?

ノダチ👨‍💼:計算の考え方としてはその通りです!「一円ももらえない」と思っていた状態から考えると、法律でこれだけの割合が守られているというのは、少し心の負担が軽くなりますよね。

例3:相続人が「配偶者」と「兄弟姉妹」の場合

先ほどお話しした通り、兄弟姉妹には遺留分がありません。

そのため、遺言で「全財産を妻に相続させる」となっていれば、配偶者がすべてを相続し、兄弟姉妹が遺留分を請求することはできません。

遺留分は自動でもらえるわけではない

お客様👨‍🦰:法律でそれだけ守られているなら、私が何もしなくてもその4分の1の枠は勝手に私の口座に振り込まれたりするんですか?

ノダチ👨‍💼:残念ながら遺留分は待っているだけで自動的に振り込まれるものではありません。

お客様👨‍🦰:やっぱり、自分で動かないといけないんですね。

ノダチ👨‍💼:そうなんです。遺留分を侵害された人(お客様)が、財産を多く受け取った人(お兄様)に対して、「私の遺留分が侵害されているので、その分のお金を支払ってください」と意思表示(請求)をする必要があります。これを「遺留分侵害額請求」と呼びます。

お客様👨‍🦰:兄に対して直接「お金を払って」と言うのは、関係性が悪くなりそうで少し勇気がいりますね……。

ノダチ👨‍💼:お気持ちは本当によく分かります。まずはご兄弟間で穏やかに話し合い(協議)をして解決できれば一番理想的です。しかし、「遺言書がすべてだ!」と相手が頑なになってしまい、話し合いがまとまらないケースも少なくありません。そうした場合は感情的なぶつかり合いを避けるためにも、弁護士などの法律の専門家に間に入ってもらい、内容証明郵便の送付や、家庭裁判所での調停・訴訟といった手続きを検討していく流れになります。

遺留分侵害額請求には期限がある

ノダチ👨‍💼:そして、もう一つ絶対に知っておいていただきたいのが「期限(時効)」のお話です。遺留分を請求できる期間には厳しいタイムリミットがあるんです。

お客様👨‍🦰:期限があるんですか!?それはいつまでですか?

ノダチ👨‍💼:原則として、「相続の開始(お父様が亡くなったこと)」および「自分の遺留分を侵害するような贈与や遺贈があったこと」を知った時から1年以内に請求を行わなければなりません。

お客様👨‍🦰:えっ、たったの1年ですか!?

ノダチ👨‍💼:そうなんです、意外と短いですよね。日々の忙しさやショック、親族間の気まずさから「どうしよう……」と感情的に放置して悩んでいるうちに、あっという間に1年が過ぎてしまい、請求する権利自体が時効で消滅してしまう……というケースは実際にあります。なお、相続が始まったことを全く知らなかった場合でも、相続開始から10年を経過すると原則として請求できなくなります。

お客様👨‍🦰:1年なんて本当にあっという間ですね。悩んでいる暇はないというか、早めに動かないと損をしてしまう可能性があるんですね。

ノダチ👨‍💼:そうですね。ですから、遺言書の内容に疑問や納得がいかない点がある場合は、決して一人で抱え込まずできるだけ早い段階で専門家に相談して状況を整理することが何よりも大切になります。

不動産がある相続で遺留分トラブルが起きやすい理由

お客様👨‍🦰:私の実家は明石市大久保にある一戸建てなのですが、今回の父の財産の大半がその「実家(不動産)」なんです。現金は少ししかありません。こういう場合でも、ちゃんとお金で請求できるんでしょうか?

ノダチ👨‍💼:実は、相続財産に「不動産」が含まれている場合、遺留分の問題は格段に複雑になりやすく、トラブルに発展しやすい傾向があります。理由は大きく分けて4つあります。

理由詳細・トラブルの背景
① 簡単に切り分けられない現金なら1円単位でパッと分けられますが、実家の土地や建物を「ここから半分はあなたのもの」と物理的に切り分けることはできません。
② 評価額によって金額が大きく変わる不動産の価値(価格)は一つではありません。固定資産税評価額、路線価、そして実際に売れる価格(実勢価格)など、どの基準で計算するかによって、遺留分のベースとなる金額が何百万円も変わってしまうことがあります。
③ 引き継いだ人に現金がないと支払えないお兄様が実家をそのまま相続した場合、お兄様自身に手持ちの現金(貯金)がなければ、お客様から「1,000万円の遺留分を払って」と言われても、支払う原資がなくて困り果ててしまうことがあります。
④ 共有名義にすると将来の爆弾になる「お金がないから、とりあえず実家の名義をお兄様とお客様の共有にしよう」とするのは大変危険です。将来、売却や管理・修繕、あるいは次の相続が発生したときに、ほぼ確実に大きなトラブルの原因になります。

お客様👨‍🦰:うわぁ……まさに我が家がその通りになりそうです。兄も決して裕福なわけではないので、実家を相続しても私に支払う現金なんて持っていないと思います。じゃあ、私は権利があっても結局お金をもらえないんでしょうか?

実家を売却して分けるという選択肢

ノダチ👨‍💼:そんなことはありませんよ。お兄様に手持ちの現金がない場合、解決策としてとても有効なのが「実家を売却して現金化しそのお金を分ける(あるいは遺留分の支払いに充てる)」という選択肢です。

お客様👨‍🦰:なるほど!実家を売ったお金から、私の遺留分を支払ってもらうということですね。

ノダチ👨‍💼:その通りです!もしお兄様自身が「その実家にどうしても住み続けたい」というわけではなく、将来的に空き家になってしまうような状況であれば、思い切って不動産を売却してしまうのが一番すっきりします。現金化することで誰もが納得いく形で公平に分配できるようになりますし、将来の管理の手間や固定資産税の負担からも解放されますからね。

お客様👨‍🦰:確かに、誰も住まない実家を無理に持っているより売却して現金で分けた方がお互いに遺恨が残らない気がします。

まとめ|遺言があっても、まずは状況整理を

ノダチ👨‍💼:いかがでしたでしょうか?「遺言書があるからもう何もできない」と諦める必要はない、ということがお分かりいただけたかと思います。最後におさらいをしましょう。

  • 遺言があっても、一定の相続人には最低限の取り分「遺留分」がある
  • ただし、兄弟姉妹には遺留分がないので注意
  • 遺留分は自動的にもらえないので、「知った時から1年以内」に請求が必要
  • 不動産が絡む相続は複雑なので、「売却して現金化」も視野に早めの対策を

ノダチ👨‍💼:なお、具体的な「遺留分の法律判断や相手との交渉」そのものは弁護士の先生の領分ですし、「相続税の計算」は税理士の先生、「不動産の名義変更(登記)」は司法書士の先生が専門となります。株式会社nodachiは不動産会社ですので法律の判断を直接下すことはできませんが、各専門家と連携しながらお客様の大切な第一歩をサポートすることができます。

お客様👨‍🦰:不動産会社さんには、どんなタイミングで相談すればいいんでしょうか?

ノダチ👨‍💼:法律や税金の議論をする前に、まずは「その不動産が実際にいくらで売れそうか(市場価値)」が分からないと、遺留分の具体的な金額も、お兄様が支払えるかどうかの計画も立てられないですよね。ですので、「実家の正確な査定価格を知りたい」「売却して現金化する場合の手順を知りたい」という実務の面から、いつでもお気軽に私たち不動産会社を頼ってくださいね!

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